要は脱力!
ここ5年ほど、ロイヤル・アカデミー・オブ・ダンス(イギリスのロンドンに本部を置く、バレエ教育機関)のグレード試験のピアニストの仕事をしています。PrimaryからGrade8まで、受ける生徒達によって変動はありますが、およそ200曲を弾きます。私は子供達がお世話になったバレエの先生からお話をいただき、勉強のためにと思い、始めました。私の弾くテンポ、曲の表情いかんで踊りは左右されてしまうので責任重大。リハーサルの時間も限られているので、多い時で7〜8時間、弾き続けたりします。よく「そんなに弾き続けて手がどうにかなっちゃうってことはないのですか?」なんて聞かれたりします。腱鞘炎で手を壊したという音楽家の方もよくいるけれど、私が幼い頃からやってきた弾き方は、たぶん腱鞘炎とは無縁だと思います。成長するにつれ、弾く曲の難易度も上がり自我が強くなってくると、気負いや緊張で無駄に力を入れてしまうという場面も増えてくるかと思います。そんな中で脱力することは、とても重要になってきます。脱力といっても、フニャフニャにすることではなくて、なんというか、脱力すればするほど、体幹というか・・・心と身体の芯みたいなものが重要になってくると私は思います。練習する事によって、そこを鍛えてるいる感じです。
バレエ音楽は、踊るための音楽なのでリズムが生きていないと、ダンサーも動きづらい。生き生きとしたリズムは、ガチガチの硬い演奏からは出てこないと思うのです。そういう意味で、私には凄く勉強になります。さすがに7〜8時間も弾き続けると疲労しますが、腕が痛いとか手が痛いというような症状は全くなく、体全体が運動したかのような疲労感・・・といった感じです。バレエの先生もおっしゃっていましたが、少しでも長く踊れるように(演奏できるように)身体をしなやかに使うことに目を向ける事が、長く楽しく続けて行く重要なポイントになると思います。
芸術は熟成されていくものだと思うので、自分の経験、重ねた心模様が表現されていくものです。年を重ねれば重ねただけ、それは深みを増して味わいのあるものになっていくのですもの。やっぱり少しでも長く表現していたいですよね。もちろん、芸術に限らず生きて行く姿勢においても同じです!芯をしっかり持って、脱力しましょう!